久し振りの

久し振りの全文引用でした。
 
彼女は渋谷駅から東横線の横浜行き最終電車に乗ります。
おかいものに来たのでしょうか、何かのお店の小さな袋をかかえています。すこしセンチメンタルになっているのはなにか真剣な映画を見たのでしょう。
駅員さんの低い鼻声が聞こえます。どこかで急行の待ち合わせをするそうです。やがて、空気の音とともにドアが閉じられ、電車が動き出します。
渋谷と代官山のあいだの街はとうに夜一色です。電車やビルや、さまざまな窓にライトアップされた何かの看板がいくつも映ります。暗いときには彼女の顔が映ります。
でも、電車はいつまでも代官山には付きません。
窓にはいろんな人の顔が映ります。原宿で見たセンターGUY、論理学の田宮先生、親友の直子……そしてそれは最後にはみたことのない女の人になります。
そしていろんな人が順にアナウンスをはじめます。大塚範一、彼女の母親、論理学の田宮先生(また出てきました)……最後に男のコがアナウンスをはじめた瞬間に、彼女は意識を取り戻します。
電車はまさに彼女の降りる妙蓮寺駅に到着するところです。彼女はあわてて立ち上がり、ホームに降りてすこしほっとします。
そしてさっきまでのイメージ、みたことのない女の人としゃべりかけた男のコのことは忘れてしまいます。
マンションをエレベータで10階までのぼって彼女はやっと家に帰りつき、簡単にシャワーをあびて寝る服に着替えます。
早くも明け方の予感を漂わせた空。セットしためざましは1時58分を指していました。


雨が降って強い風が吹いた日、止まった南武線を前に彼女は武蔵小杉で立ち往生してしまいます。
そんなとき、彼女はあのイメージを思い出すのです。
あの女の人が誰だったか、あの男のコは誰なのか。それを思い出すのはもっと先のことなのかもしれません。
でも、彼女は男のコの声を思い出してひとりでつぶやくのです。
「そろそろ行かなきゃ。」
彼女が東横線をひきかえした15分後、南武線はふたたび運行をはじめました。
 
以上この詞および音源にまつわる妄想でした。以下にこの妄想がよくわかる余談をいくつか示します。
余談1:渋谷発の東横線の終電には横浜行きと元住吉止まりの二種類があり、モトスミ止まりの終電は横浜行きよりも遅い
余談2:東横線は渋谷→代官山→中目黒→祐天寺→学芸大学→都立大学自由ヶ丘→田園調布→多摩川→新丸子→武蔵小杉→元住吉→日吉→綱島菊名→妙蓮寺→白楽→東白楽→反町→横浜の順に運行して参ります(暗唱できるようになりました
余談3:JR南武線悪天候に弱いことで有名。武蔵小杉ではその南武線と乗り換えることができる。