ベルギー象徴派展@Bunkamura

初めて音声ガイドを借りてみたのだが、あんなの10円の価値もねぇーな。。。
 
音声ガイドのせいで苛立ちながらの観覧でした。500円も出してんだから象徴内容の説明ぐらいしろよ。
ただ、いい作品はもちろんありました。
レオン・フレデリックという人の父・子・聖霊の三枚からなる「聖三位一体」という作品です。
とくに「聖霊」が良かった。
鳩を頭上に頂いた翼の生えた少女が白い衣装をまとって百合の花の咲く草原で意味ありげな仕草をとり、うつむいて涙をこぼしているのです。
あしもとには齧られた数個のリンゴが転がり、一匹の大蛇が大きな口を開けて踏みつけられています。
まわりには大勢の羽の生えた天使たちが顔をおおい、少女と同じく悲しみにくれています。
大蛇の口からは白い煙が出ているのですが、それは上へ広がり、あたかも周りの天使たちの衣装と同化しているかのようです。
という感じ。
この作品で俺が分かった象徴は以下の通り。

  • 「鳩」:鳩は伝統的に三位一体の「聖霊」を象徴する。少女が聖霊を擬人化した存在であるという意味か。
  • 「リンゴ」:言うまでもなく罪の果実であるとともに原罪の象徴。
  • 「蛇」:知の象徴。詳細は後述
  • 「百合」:聖母マリアの純潔の象徴。他の花よりは百合って感じであまり深い意味はないのか。

美っつくしい少女が泣いてるのでそこに目をとられるのですが、むしろその少女が蛇を踏みつけている(&ヘビから煙がでている、煙と天使たちが同化している)のがこの絵のポイントだと思うのです。
蛇はもっとも知識ある動物とされ知の象徴であるとともに、エデンでアダム&イブを罪に陥れることから邪悪なるものを象徴するのでしょう。かじられたリンゴがころがってるし、聖霊たる少女がふんづけちゃってるので。
あとはキリスト教会が異端として弾圧したグノーシス主義がそのシンボルとして蛇を用いている(グノーシスって知という意味)のも考えると異端の象徴でもあるのかな。それは考えすぎか。
とにかく、隣の「子」の絵でも子たるキリストの肖像をもった二人の幼い天使が蛇を踏んだりしているんですが、とくにそれに頓着する様子はないのです。それにくらべてこの絵ではみんなが画面全体を挙げて泣いてる。。という。
あとは少女の手つきも気になります。この絵は一体なんなんだ。。。
だれか拍手でそっと教えて(何
 
美術が「ある程度の知識がないとわからない」と言われている&思われている理由は、古典及びその流れを汲む絵画の図像性(内容に重きをおく態度)にあると思うのです。とくにこの象徴というやつは知識がないと全く分からん!あとは持物*1がわかってないと誰の絵だかわからん、とかいうのもあるし。
ということで俺は絵画における芸術性について、様式の図像に対する優位性を断固主張するッ!(何
 
あとは、先日のアンソールさんの版画があった。庭園美術館と全く同じものがいくつかあってびっくりしたけど、版画だから複数あってもおかしくないのか。。。

というわけで、損保ジャパン美術館のファーブル美術館展は切る。あとは横浜のルーブルだけか。。

*1:じぶつと読む。アトリビュート。ある聖人や神々、天使などを象徴するモノ。たとえば、十二使徒の誰かを描いたとされる絵にオッサンと鍵が描かれればそれはペテロであり、オッサンと杯が描かれればそれはヨハネである