こんなことが書いてあるところがあったので、

ほかに保存するところもないのでメモしておきます。前のくじらの詩と同じ所なんですけど。

この石の上を過ぎる/小鳥たちよ。/しばしここに翼をやすめよ。/この石の下に眠っているのは、/おまえたちの仲間のひとりだ。/何かのまちがいで、/人間に生まれてしまったけれど、(彼は一生それを悔いていた)/魂はおまえたちとちっとも異ならなかった。/なぜなら彼は人間のいるところより、/おまえたちのいる木の下を愛した。/人間のしゃべる憎しみといつわりの言葉より、/おまえたちの/よろこびと悲しみの純粋な言葉を愛した。/人間たちの理解しあわないみにくい生活より、/おまえたちの信頼しあった/つつましい生活ぶりを愛した。/けれども何かのまちがいで、/彼は人間の世界に生まれてしまった。/彼には人間たちのように/おたがいを傷つけあって生きる勇気は、とてもなかった。彼には人間たちのように/現実と闘ってゆく勇気は/とてもなかった。/ところが現実の方では、/勝手に彼にいどんできた。/そのため臆病な彼は、/いつも逃げてばかりいた。/やぶれやすい心に、/青い小さなロマンの灯をともして、/あちらの感傷の海ヘ、/またこちらの幻想の谷へと、/彼は逃げてばかりいた。/けれど現実の冷たい風は、/ゆく先、ゆく先へ追っかけていって、/彼の青い灯を消そうとした。/そこでとうとう危くなったので、/自介でそれをふっと吹き消し、/彼はある日死んでしまった。/小烏たちよ、/真実、彼はおまえたちを好きであった。/たとい空気銃に射たれるにしても、/どうしてこの手が、/翼でなかったろうと、/彼は真実にそう思っていた。/だからおまえたちは、/小鳥よ、ときどきここへ遊びにきておくれ。/そこで歌ってきかせておくれ。/そこで踊ってみせておくれ。/彼はこの墓碑銘を、/おまえたちの言葉で書けないことを、/ややこしい人間の言葉でしか書けないことを、/かえすがえす残念に思う。