オルセー美術館展“19世紀 芸術家達の楽園”@東京都美術館。

というわけで行ってきました。
ルーブル美術館はすごく有名ですが(ルーブル展の混み具合に顕著に現れてますね)、オルセー美術館もブランスにあるでかい美術館で、ルーブルと人気を2分するといわれているわけです。
じゃあこのふたつがちゃんちゃんばらばらの泥仕合をしてるのかというとそういうわけではなくて、18世紀ぐらい(つまり印象派の出現時期)を境にして有史〜印象派以前はルーブル印象派〜近代前期ぐらいまではオルセーって感じで収蔵作品の年代が別れています(と美術の冨田君が言っていました)。
そんなわけで俺はオルセー展に行ってルーブル展には行かなかったのです(何
まあもちろんダイジェスト的な感じは拭えなかったんですけど、それにしても印象派が投げた波紋が様々な方向に消化されて広がってゆくさまがちょっとだけ見えた気がしました。
それからほとんど全部の絵にキャプションがついてるというのも意欲的ですごくよかったです。内容もぴちっとしてて、さすが東京都美術館のカンロクといった感じ。
あと前からさんざんわからないと言い続けてきたセザンヌのすごさがほんのちらっとだけ垣間見えた気がしました。
ただし、こんどはゴーギャン系の人々(綜合主義というやつですか?)の考えてることが全然わからないという新たな問題が。どーも俺は様式的な傾向一般がニガテなのかも。。。
それから、前に悪口を言った象徴派の人たちですが、意外と周波数が合う気がしてきました。
くそ。あのとき散々だったのはぜったいあのカスの役にも立たない音声ガイドのせいだ!!!!
と意味もなくキレてみたところで今後は彼らへの態度を改めようと思います。
あとは写真かなあ。絵画とか写真自身が写真の誕生によって揺るがされるさまですよね。ピクトリアリズム(絵に描かれるような構図の写真をとろううとする傾向)はまあ本末転倒っちゃ本末転倒なわけなのですが、人々はそれまで絵という視点しか持たなかったわけなので、写真という道具を使いこなすに従って逆に、写真本来のあるがままを撮る/なんの造作もない瞬間を切り取るということ(ストレートフォトグラフィー)がわかってきたっていうことなんでしょうか。
以下気にいった作品について。
モリゾの「ゆりかご」。一番始めにモネと出会ったのがまさに東京都美術館マルモッタン美術館展なのですが、そのときにモネと対バンを張る形で(何)モリゾも大フィーチャーしてあったのです。そのときモネの「色のきれいさ」にうかれてた俺にはまだひびくものはなかったわけなのですが。。。でも今日あらためて見るとよかったです。
それからモネの「アパルトマンの一隅」。彼のアパルトマンに差し込むのはいつもの溢れんばかりの光というよりは月みたいな静かな光だったわけなのですが、うーん。さすがは光の画家と言われて褒めそやされているだけある。
それからルノワールの「ジュリー・マネ(あるいは猫を抱く子供)」。輪郭を捨てていったん印象派の国の右大臣にまで上り詰めた*1あとの、輪郭の国に帰ってきた彼の絵を見るのはたぶん初めてだと思うのですが……まああえていえば、ぬこ萌え?(何
あと知らない人なのですがオディロン・ルドンという人の「セーラー襟のアリ・ルドン」もよかったです。
そうそう、それからなんか8ミリフィルムから浮き出てきたようなミレーの「グレヴィルの教会」。ちらっと見るとあんまりぱっとしない田舎の絵みたいな感じなんですけど、うーん。吸い込まれるようでした。
えー、続きましてマネの「ブーローニュ港の月光」。チケットの絵にもなってる「すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ」にも共通して言えることなんですけど、マネって黒色の画家だったのかもしれないっすね。
それからスーラとシニャック。この人らは絵を描いてる途中でくじけないんですかね(何
それから写真なんですけど、エドワード・スタイケンという人の月光シリーズ。夜の写真ですね。
夜の牧草地によりそう羊の群れを写した「田園、月光」はとても愛らしかったです。
エルス・タールマンという人の「エッフェル塔に向かう4人の男」なんかは写真という新しいメディアのもたらすすがすがしくて力強い決意をそのまま表したみたいな感じ。
さっきも言ったセザンヌの「サント=ヴィクトワール山」はたしかになんかいいね、と思わせるものがあったです。
あとは象徴派っぽい人たち。
ジュゼッペ・ペリッツァ・ダ・ヴォルベードという長ったらしい名前の人の「死せる子供(あるいは夭逝の花)」。子供の葬送の列を後ろから描いてるので人がみんな後ろ向きなんですよね。
ヴィルヘルム・ハンマースホイという人の(すげえ苗字だな)「室内、ストランゲーデ30番地」はただ部屋を描いてるだけなんですけど、整合性のなかになんつうか、次の瞬間になにかが起こるんじゃないか、というよりは、世界が滅んでもここだけはずっとこのままなんじゃないかっていうキリコ的な不穏さがあるんですよね。
うーん。あとは最後を飾るヴィテスラフ・カレル・マチェックの「預言者リブザ」。こう、清原と叶恭子さんをまぜてしぼったような美しい迫力がありました。
そんな感じですかね。総評としては「やっぱりモネは偉い」ということでシメたいと思います(何

*1:左大臣はもちろんモネ