オラファー・エリアソン展「あなたが出会うとき(原題:Your chance encounter)」@金沢21世紀美術館

 
 
お正月に帰省したときに手違いで見られなかったオラファー・エリアソン展がぎりぎりやってたので見に行ってきました。
前に原美術館オラファー・エリアソン展がすばらしかったので(cf. http://d.hatena.ne.jp/dameempire/20060304)。
ちょっと思う所あるので、以下作品名は「邦題/原題」の形で表記します。
 
まず入ってすぐのところがライトの森みたいになってます。(「スターブリック/Starbrick」)。
ライトを4つ正四面体上に集めた単位をbrickに見立てて構造物を作ってあるんですけど、
これはよく見ると内側が鏡っぽくなっててなかが反射しているのでした。
 
次に見たのが「あなたが出会うとき/Your chance encounter」。
円運動と白色光という組み合わせが原美術館での「空間を包み込むもの/Your space embracer」を彷彿とさせるんですが、
「空間を包み込むもの」が一定不変の時間、もので例えれば時間の灯台をイメージさせるものだったのに対して、
こちらは生まれては消えていく個人的な時間、というかまさに機会/chanceのようなものを連想させる内容でした。ものでたとえれば時間の母宇宙と子宇宙ですかね。
光と影を生み出してる装置の動きがけっこう予測不能でした。
まちがいなく本展のハイライトのひとつですね。まあそれだからタイトルになってるんだろうけど。
 
そのとなりの部屋は原美術館にもあった「一色の部屋/Room for one colour」です。
ここのオレンジ色の光が「あなたが出会うとき」にもれてきて実はちょっと不快だったんですけど、
そのへんはわざとなんですかね。というかわざとでなければぶっとばす(何
ただ、原美術館でのタイトル「単色の部屋と風が吹くコーナー/Room for one colour and Wind corner」にもあるように風が吹くギミックはこの部屋にはありませんでした。
 
その部屋の横の通路には「眼になった身体/Your body as eye」があります。
手がパントマイム的なさまざまな動きをする映像を直方体のプリズムを通して見るという感じ。
直方体のプリズムなので、正面から内側を除くと合わせ鏡になって映像がばーっと繰り返して見えるんですね。
で、それが横から見ると一切見えない。ということで安易な言葉を使うと無限とゼロの境界とかいう感じだと思うんですけど。というか、「めっちゃ見える」と「ぜんぜん見えない」の対比というか。
 
で、そのわきには「微光の水平線/Less light horizon」です。
これはまあ、よく言葉にはならないんですけど。ミニマル的なあれですかね。
 
もっとよくわからないのが「ワナビ/Wannabe」です。
天井からスポットライトが照らされてる、というだけの作品。
題名からこじつければ、みんなスポットライトあびたいでしょ、ということなんじゃないかと思うのですが。。。
 
そこから少し戻ると、「人生は線に沿って営まれる/Life is lived along lines」があります。
光の前にワイヤーフレームな感じの立体がぶらさがってて、その影をスクリーンに映して見るというやつです。
このスクリーンの影がすごいCGっぽいんですよね。
いま思ったんだけど、原美術館の「カメラオブスキュラ/Camera obscura」もそうなんだけど、光と影でハイテクを模するみたいなあれがあるんでしょうか。
まあそういう理屈を抜きにしてふしぎな形がうねうねするのは眺めていて飽きないものがあります。
 
その隣は「ゆっくり動く色のある影/Slow-motion shadow in color」です。
これ、訳が間違ってると思うんですよ。
作品としては、色の違うライトが7つぐらい横に並べてあって、その前に立つといろんな色の影が7つぐらいできる、というものなんですけど、
ライトは据え置きで動かなくて、たぶんSlow-motionというのはライトの位置差でできるおんなじ人の複数の影を動きに見立ててるんだと思うんですよね。なのでゆっくり動くというのはどうなんだと。
作品自体は、おれが見てるときに美大生っぽい森ガールの集団が入って来ていろいろ遊んでて楽しかったです。
別の場所に「ゆっくり動く影/Slow-motion shadow」というのもあります。こちらはライトがせんぶ白なんですね。
今から考えると、色ありと色なしが同時に展示されてるのにはなにか意図があっていいと思うんだけど、よくわかりません。
 
それから「見えないものが見えてくる/You make things explicit」。
これは長い部屋に指向性の高いスポットライトが横向きに置いてあって、途中にガラスの箱が置いてあるんです。
初めはなんだろう?と思ってて、スポットライトの光の通り道がちょっと見えるのが見えないものが見えてるのかなあと思ったんですけど、
ライトの側から箱を見ると、箱にライトが当たってるとこが二つ丸く明るくなってて、箱に反射してライトが見えるぶんが二つ丸く明るくなってて、向こう側の壁に投影されて1つ丸く明るくなってるというのが一直線に見えるわけです。
それがほんとにexplicitって感じで、表れた瞬間がすごくよかったです。
 
その部屋の外には「頭脳になった身体/The body as brain」があります。
パントマイム的な動きをするオッサンの影が壁の向こう側から投射されてる感じです。
ちっちゃいことをいくつか考えたんですが、これはあまりおれとスウィングしませんでした。
ところで「眼になった〜」ではYour bodyだったのがThe bodyになってるのがなんなんですかね。スティーブンキング?(何
 
次はこの展いちばんの問題作「色のある影絵芝居/Colour shadow theatre」です。
要は、でかい万華鏡を20個ぐらい集めたようなものの底面にスクリーンがはってあって、向こう側から何色かのライトがあたってる。
それで、ライトとスクリーンのあいだを人が通るのを万華鏡のほうから見ると、色のついた影がくるくるして綺麗だというやつですね。
これ、2人いないと楽しめないじゃないですか。
少し気をつけてみてたんですが、1人で来てる人とか、複数でも固まって移動してる人は素通りでしたよこれ。
せめて美術館側の監視員さんが間を行ったり来たりするとか、そういうことはやってほしかったなあ。
 
「愛が十分な壁でないとき/When love is not enough wall」は、壁に穴があいてて、
そこをのぞくととげとげした丸い物体が見えるというやつです。
愛が十分な壁でないときになにが漏れてくるのかと思うわけなんですが、あんなきれいな物体なら漏れて来てもいいかなと思うわけです(適当)。
 
えー、いくつかスウィングしなかったやつを飛ばしまして、分かる人には分かる21世紀美術館のあの謎のガラス通路に置いてあったのが「あなたはどこから来たのか?あなたはなにか?あなたはどこへ行こうとしているのか?/Where do you come from? What are you? Where are you going?」です。
これもねえ。訳がちょっとおかしいよね。
これ、ゴーギャンの「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか(Where do we come from? What are we? Where are we going?)」のオマージュじゃないですかね。
だから「あなたは何者か?あなたはどこへ行くのか?」がいいと思うわけなんです。あとハテナマークもいらないね、たぶん。
まあそれはおいといて、作品はなにかというと、例の通路いっぱいのでかいファンが置いてあって風ができてるってやつです。
エリアソン氏が光に興味があるのはすごくよく分かるんだけど、ファンもなぜか好きだよね。
まあこれはたぶん、風がふいてきて、ふいていくというのが「あなた」の来し方行く末というやつで、風を生み出しているファンが「あなた」、さらに言えばときの流れの力を生み出しているのも「あなた」とか、そういうあれなんでしょうか。
ゴーギャンに対するシンプルな回答という感じもしますね。
 
そして、この展最後のハイライトが「水の彩るあなたの水平線/Your watercolour horizon」です。
これ、「あなた」要る?「色彩の水平線」とかでいいじゃん。
まあそういうイチャモンはあるんだけど、作品はもうモノスゴイものでした。
丸い展示室のまんなかにプールがあって、そこの中心から円状に虹色の光が投射されていて、それがプールの底に円として映るのと同時に、水面で反射して壁に色彩の水平線を描くというやつです。
圧倒されます。
壁に映ってる虹はゆらゆら揺れてるので、それがすごくいいと同時に時間とか宇宙のゆらぎみたいなものを感じるんですが、自然に水がゆれてるにしてはちょっと揺れがはっきりしてるなあと思ったらよく見るとプールの底には波発生装置があるんですね。
ちょっと入り口の足場のたてつけが悪かったのがどうなんだろうという感じでしたけど。
 
最後に見たのが、「あなたが造りだす大気の色地図/your atmospheric colour atlas」です。
これも「あなた」要る?とおもうんだけど。
これは部屋に濃くスモークがたいてあって、部屋のあっちは赤色、こっちは緑色というふうにいろんな色のライトがついてて、部屋の空間自体がいろんな色にまじりあった状態になってる、という作品です。
なんというか、パソコンで絵をかくときに色を選ぶんですけど、そのカラーピッカーのなかをぐんぐん飛んでいるような感覚をおぼえました(おっと、図らずもまたハイテク要素とのつながりが)。
 
というわけで、大満足な内容でした。
ただし、光と影と空間というオラファー・エリアソンのテーマ上、観客(の影)を前提として成り立ってる作品がけっこうあるので、確実に楽しむためには混んでそうな日時を狙って行くか、あるいは複数人で行く必要がある展示だと思います。